掲載物をご紹介します


「サンデー毎日」に掲載されました
「ドッコイ、生きてる紙芝居」

77才紙芝居師がつたえる子供達へのメッセージ

拍子木を打って人集め。懐かしい街頭紙芝居のはじまり
紙芝居の原版が並ぶ書斎。原版は絵師に描かせる場合と
先人から受け継ぐ場合がある

 

カキーン!カキーン!

甲高い拍子木の乾いた音が、重なり合う高層マンションの谷間に響きわたる。「紙芝居やるでー!来てやー!」数分後、子どもたちが 小銭片手にワラワラと集まってくる。

「おっちゃん、水あめください」 「クジください」 みんな、ちゃんと一列になって敬語を使って駄菓子を買っていく。そして街頭紙芝居のはじまり、はじまり~! 「小さい子は前。大きい子は後ろや。大人は外。ちゃーんと大きな声で返事せい!ええかぁ!」まるでこの一角だけがタイムスリップしたかのように思える。現在、日本でただ一人とされるプロの街頭紙芝居師、杉浦貞さん。

-中略-

「でもこんな楽しい仕事はないですよ。昼からゆっくり町に出て、子どもらと過ごして、こっちまで元気をもらえるんですから。」

杉浦さんの夢は紙芝居を通して、再び地域の結びつきを呼び覚まし、”古き良き日本人の付き合い”を蘇らせることだという。 後継者も募集中なんだとか。

 

 

 

「講演依頼」

最近、企業からの講演依頼も増えてきた。

「今、子どもらは、大人のせいで生きる力を失っている。大人は口だけでなく実行せい。」

「紙芝居で子どもたちの生きる魂を呼び起こしてやりたい。」

杉浦さんの叫びに皆、真剣に耳を傾ける。

今後も色々な場で活躍されることだろう。

<写真はキリスト教保育連盟の研修で。>

 

「MIDOSAN 11月号」に掲載されました

「生きる魂を呼び起こしたい」

まるで月光仮面だ。バイクにまたがり、どこからともなくやって来る。拍子木を打ち鳴らすと、子どもたちは、「紙芝居のオッちゃん来たで。」と、声を掛け合い 集まってくる。 どこの誰かは知らないけれど、子どもはみんな知っているのだ。

大阪市内の十数カ所の公園には毎日、今もこうして紙芝居のオッちゃんがやって来る。日本でただ一人のプロ街頭紙芝居師・杉浦貞さんが参上するのである。 「素人といっしょにされたらかなわんから、自分でプロってつけたんや」 この「プロ」には、それのみで生計を立てているという事実だけでなく、三十年間、ほぼ毎日、たった一人で、のべ七十万人もの子どもと相対してきた自負がある。 昭和五十五年、勤務先の染色工場が倒産したのがきっかけで、杉浦さんはプロの紙芝居師となった。当時四十八歳。生活への不安もあり家族は猛反対していた。 が、ある日、ばったり出会った子どもらに、「昨日も待ってたのに何してたんや」と言われ、返す言葉がみつからず、以来、紙芝居一筋の人生となった。

実は、杉浦さんの著書「ザ・カミシバイ」には、拍子木の選定から、身だしなみ、演じるときの足の角度、絵の抜き方にいたるまで、長年の実践で体得した街頭紙芝居 の「型」が具体的に記されている。 さすがプロだと感心せずにおられない。しかし、一見しただけでは、そんなすごいことが行われているようには見えない。 その理由は、杉浦さんが、イチローのヒットと同じように、いとも簡単にやっているように見えるから。そう易々と真似などできないことに、我々は気付かないのである。 今一度、杉浦さんの一挙一投足に目を凝らしてみた。 まず、定位置であるバイクの横からほとんど動かない。会社でも、社長が動き回ると社員は落ち着かないものだ。公園の真ん中に立っている一本の木のようで、子どもらも 安心しきっている。 そこに、「オッちゃんテンカス」、「コアラください」と次々に子どもがお菓子を買いにやって来る。どれも一つ五十円。中でも注文が多いのは「ウサギ」。 割り箸に巻き付けた水アメを二枚のせんべいで挟み、もう一枚のせんべいを半分に割り、それを耳にする。最後にソースの付いたハケで目と鼻を描く。 その間、約十秒。手元はほとんど見ない。 こんな短い間に、自分の前にいるその子の性格を瞬時に感じ取り、それぞれに合わせた言葉を掛けている。 「返事せえ」、「もっと大きい声で」、「この子に教えたれ」、「親孝行って知ってるか」 すると、どの子も学校や家では見せないような顔をする。「生きるために教える」杉浦さんの教育である。  紙芝居は、子ども番組なんかとまるで違う。杉浦さんのダミ声と劇画タッチの手書きの絵。そのどことなく怪しげな雰囲気に、子どもたちは引き込まれていく。 そして、「また来週のお楽しみ~」と、子どもたちが飽きる前にさっと終わる。

プロ街頭紙芝居師のプロたるゆえんは、プロとは気付かせず、「紙芝居のオッちゃん」で居続けることなのだと思う。 「今、子どもらは、大人のせいで生きる力を失っている。紙芝居で生きる魂を呼び起こしてやりたいんや。水あめを買ってオレを生かしてくれている子どもたちのためや。これが報恩感謝や。大人は、口だけじゃなくて実行せえ」ただひたすらに子どもと向き合って来た、「紙芝居のオッちゃん」は、そう言い残すと、疾手のように去っていった。

NPO法人紙芝居文化協会 ℡06-6353-2957